死ぬ直前まで耳は聞こえる?反応がなくても声は届くのか研究で解説

死ぬ直前まで耳は聞こえるのかを研究で解説するアイキャッチ画像 カラダのハテナ

「もう聞こえていないのかな」と感じたら

「もう呼びかけても返事がない」

「目も開けないし、話しかけても聞こえていないのかな……」

家族が亡くなる直前になると、こんなふうに思うことがあるかもしれません。

昔から、

「耳は最後まで聞こえている」

と言われることがあります。

では、これは本当なのでしょうか?実は、亡くなる直前の患者さんの脳波を実際に測定した研究があります。

先に結論をお伝えします。

亡くなる直前で反応できなくなった人でも、音の変化に反応する脳活動が残っていることが確認されています。だから私は、反応がなくても話しかけてあげてほしいと思います。

ただし、「ありがとう」という言葉の意味まで理解しているかどうかは、現在の研究では分かっていません。

それでも、声がまったく届いていないとは言い切れないのです。

この記事では、

  • 亡くなる直前まで耳は聞こえているのか
  • どんな研究で確かめられたのか
  • 声の「意味」まで理解できているのか
  • 家族の声に特別な反応はあるのか
  • 反応がない人に何を話しかければいいのか
  • 手を握ることにも意味はあるのか

について、研究と終末期の患者さんに関わってきた経験から解説します。


結論|反応がなくても、話しかけてあげてほしい

亡くなる直前の患者に音を聞かせ脳波を測定した2020年研究の図

最初にこの記事で一番伝えたいことです。

返事がなくても、目を開けなくても、話しかけるのをやめなくていい。

2020年に『Scientific Reports』に掲載された研究では、亡くなる直前で外部への反応がなくなったホスピス患者5人を脳波で調べています。

その結果、5人全員で音の変化に対する何らかの脳反応が確認されました。

つまり、

身体では返事ができなくなっていても、脳の聴覚系まで完全に反応しなくなっているとは限らない

ということです。

また、米国国立がん研究所(NCI)も、終末期では話せなくなったあとも聞く能力が残っている人がおり、反応がなくても家族が触れたり話しかけたりすることが安楽につながる可能性があると案内しています。

だから、この記事の答えはシンプルです。

「聞こえているか分からないから黙っておこう」ではなく、「聞こえている可能性があるから伝えよう」でいい。

私はそう考えています。


亡くなる直前の患者さんに「音」を聞かせた研究がある

「耳は最後まで聞こえる」

そう言われても、

「それって誰がどうやって確かめたの?」

と思いますよね。

そこを実際に調べたのが、2020年の研究です。

研究者は、

  • 健康な成人
  • まだ反応できるホスピス患者
  • 反応できなくなった終末期のホスピス患者

に音を聞かせながら、EEG(脳波)を測定しました。

使ったのは会話ではありません。

500Hzと1000Hzの音を組み合わせ、「同じような音が続いている途中で、違う音が入ったら脳は反応するか?」を調べています。

たとえばイメージすると、

「ピー、ピー、ピー、ピー、ポー」

のような変化です。

そして、亡くなる直前で反応できなくなった患者5人全員に、音の変化を検出したと考えられるMMNまたはP3aという脳波反応が確認されました。

さらに一部では、より複雑な音のパターンに対するP3bという反応も認められています。

つまり、死が迫った数時間前でも、音に反応する聴覚系の働きが残っている人がいるということです。


「聞こえる」と「言葉を理解する」は同じではない

音に反応することと言葉の意味を理解することの違いを示した図

ここは、とても大切です。

研究から分かっていることを3段階にすると、分かりやすくなります。

① 音に脳が反応する

② 音の違いを脳が検出する

③ 「ありがとう」という言葉の意味を理解する

今回の研究で確認されたのは、主に①と②です。

③の、

「家族が『ありがとう』と言っている意味まで理解している」

ことまでは証明されていません。

研究で聞かせたのも、家族との会話ではなく単純な音です。

そのため、「最後まで家族の言葉をすべて理解している」とまでは言えません。

でも私は、ここで、

「じゃあ聞こえているだけで、何も伝わっていないんだ」

とは考えません。

言葉の意味をどこまで理解できているかは分からなくても、声の大きさやトーン、誰かがそばにいるという刺激まで、すべて届いていないとは言い切れないからです。


家族の声は「ただの音」とは違うかもしれない

さらに興味深い研究があります。

終末期そのものを対象にした研究ではありませんが、意識障害のある患者さんでは、家族などの聞き慣れた声と知らない人の声で、脳の反応が異なることが報告されています。

つまり、本人にとって大切な人の声が、すべて「ただの音」と同じように処理されているとは限りません。

もちろん、これだけで、

「家族の声だと認識している」

と断定することはできません。

それでも、言葉の意味だけではなく、聞き慣れた声やそのトーンまで何かが伝わっている可能性はある。

私はその可能性を大切にしたいと思っています。


臨床では「もしかして聞こえている?」と思うことがある

私は終末期の患者さんに関わる機会も多く、ほとんど反応がなくなった患者さんへ家族が話しかける場面を何度も見てきました。

そんなとき、

  • 握り返すほどではないけれど、手の筋肉に少し力が入る
  • 手がピクッと動く
  • 目を開けようとするように瞼が動く

といった変化を見ることがあります。

もちろん、これだけで、

「家族の言葉を理解して反応した」

とは言えません。

まったく反応のない患者さんもいます。

それでも、こうした場面を何度も経験していると、

「もしかしたら、聞こえているのかもしれない」

と思うようになりました。

昔の私は、「耳は最後まで聞こえる」と聞いても、

「本当かな?」

と思っていました。

でも、今は違います。

私は家族にも、反応がなくても話しかけてあげてほしいと伝えています。


反応がない人には何を話しかければいい?

難しいことを言う必要はありません。

伝えたいことを、そのまま伝えていいと思います。

たとえば、

  • 「ありがとう」
  • 「みんなここにいるよ」
  • 「心配しなくて大丈夫だよ」
  • 「あとは任せて」
  • 普段どおりの話
  • 一緒に過ごした思い出

などです。

私だったら、大切な家族にはまず、

「ありがとう」

と伝えます。

そして、

「あとは任せて。大丈夫だよ」

と伝えたい。

患者さんがどこまで言葉の意味を理解できているかは分かりません。

でも、もし声のトーンやその場の雰囲気が少しでも届いているなら、安心できる言葉をかけてあげたいと思うからです。

逆に、本人がもう聞こえていないと決めつけて、目の前で家族同士が揉めたり、不安を強くするような話をしたりするのは避けたほうがいいでしょう。

聞こえている可能性がある人として接する。

それでいいと思います。


声だけじゃない|「触れる」ことでも伝えられる

家族にできることは、話しかけることだけではありません。

手を握る。それだけでもいい。

終末期になると、

「何をしてあげたらいいんだろう」

と戸惑う家族は少なくありません。

私はそんなとき、

「何もしなくていいから、手だけでも握ってあげてください」

と伝えます。

言葉で伝えるのが難しいなら、触れることで伝えてもいい。

声をかける。手を握る。そばにいる。私たちは、言葉だけではなく、いくつもの感覚を使って気持ちを伝えることができます。

最期の時間には、そういう関わり方があっていいと思います。


+ONE|反応がなくても手を握る意味はある?

「話しかけるのは分かったけど、手を握ることにも意味があるの?」

これも気になりますよね。

実は、「触れること」についても研究されています。

2008年のランダム化比較試験では、進行がん患者を対象に、マッサージと「simple touch(優しく触れる)」を比較しました。

その結果、マッサージ群だけでなく、優しく触れるsimple touch群でも直後の痛みや気分が改善しました。

ただし、この研究だけで、

「手を握れば痛みが改善する」

とまでは言えません。

この研究の対象も、亡くなる直前で反応できなくなった人ではありません。

また、2026年に報告された意識障害患者への触覚刺激に関する系統的レビューでは、マッサージや手・腕などへの刺激によって、行動反応や心拍、脳波などに短期的な変化を認めた研究が複数報告されています。

つまり、

「反応がない人に触れても何の意味もない」と決めつける必要はありません。

そして私は、研究で測れる効果だけが「手を握る意味」ではないと思っています。


手を握ることは、残される家族にとっても大切な時間になる

まだ会話ができる患者さんに触れたとき、

「あなたの手はあったかいね」

「気持ちがいいよ」

と言ってもらった経験があります。

私は反応が乏しくなった患者さんにも、冷たくなってきた手や腕に触れ、少しでも温められたらと思って接することがあります。

反応できなくなってからも同じように感じているのかは分かりません。

それでも、生きている大切な人の手に、自分の手で触れられる時間には意味があると思っています。

それは本人だけのためではありません。

家族にとっても、

「最後に手を握れた」

「ありがとうと言えた」

「一緒にいられた」

という時間になります。

私自身、祖父母に生きているうちに最後の感謝を十分に伝えられなかったことが、今でも心残りになっています。

だからこそ、伝えたいことがあるなら、

伝わっているかどうかを悩むより、伝えてほしい。

そう思います。


よくある質問

亡くなる直前まで本当に耳は聞こえていますか?

亡くなる直前で反応できなくなったホスピス患者でも、音の変化に対する脳波反応が残っていた研究があります。

そのため、少なくとも、

「反応できない=耳も脳もまったく音に反応していない」

とは言えません。


話しかけた言葉の意味まで理解していますか?

そこまでは分かっていません。

現在の研究で確認されているのは、主に音に対する脳の反応です。

「ありがとう」「大丈夫だよ」といった文章の意味まで理解していることが証明されたわけではありません。

家族の声だと分かっていますか?

はっきりとは分かっていません。

ただし、意識障害患者の研究では、聞き慣れた声と知らない人の声で脳の反応が異なることが報告されています。

終末期の患者さんにも同じことが起こるとは限りませんが、家族の声が「ただの音」とまったく同じとは限らないと考えられます。

返事がなくても話しかけていいですか?

話しかけてあげてください。

米国国立がん研究所(NCI)も、終末期で反応がなくても、家族が触れたり話しかけたりすることが安楽につながる可能性を案内しています。


何を話せばいいですか?

特別な言葉はいりません。

「ありがとう」

「ここにいるよ」

「あとは任せて」

など、その人に伝えたいことを普段の声で伝えてあげてください。


手を握ってもいいですか?

本人が嫌がる様子がなく、医療上触れてはいけない理由がなければ、そっと手を握るのも一つの関わり方です。

何をしていいか分からなければ、ただそばにいて手を握るだけでもいいと思います。


まとめ|伝わっているか迷うなら、伝えてあげてください

「死ぬ直前まで耳は聞こえる」

この言葉を、そのまま科学が完全に証明したわけではありません。

でも、亡くなる直前で反応できなくなった人でも、音に反応する脳活動が残っていることは確認されています。

だから、

「返事がないから、もう何も届いていない」

と決めつける必要はありません。

  • 声をかける
  • 手を握る
  • そばにいる

私たちは、言葉だけではなく、声や触れる感覚を使って気持ちを伝えることができます。

最後に伝えたい言葉があるなら、

「ありがとう」

でも、

「あとは任せて」

でもいい。

伝わっているかどうかを悩み続けるより、言葉にして伝えてあげてください。

少しでも届く可能性があるなら、私は伝えてあげてほしいと思います。

参考文献・情報

  1. Blundon EG, Gallagher RE, Ward LM. Electrophysiological evidence of preserved hearing at the end of life. Scientific Reports. 2020;10:10336.
  2. Kutner JS, et al. Massage therapy versus simple touch to improve pain and mood in patients with advanced cancer: a randomized trial. Ann Intern Med. 2008;149(6):369-379.
  3. Abagnale S, et al. Effect of tactile stimulation in disorders of consciousness: a systematic review. Brain Injury. 2026.
  4. National Cancer Institute. Last Days of Life (PDQ®).
  5. Zhang J, Jiao Z, Huang F, et al. Brain cortex activity of patients with disorders of consciousness under familiar and unfamiliar voice of subject’s own name: an fNIRS-based study. Front Neurol. 2026;17:1789921. doi:10.3389/fneur.2026.1789921.
この記事を書いた人 きみマロ
この記事を書いた人
きみマロ
理学療法士
病院で理学療法士として勤務。論文執筆や資格研修の講師、医学情報誌への執筆などを経験。「カラダの疑問を、できるだけわかりやすく」を大切に発信しています。
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